『教育と医学』2024年7.8月号では、9歳の時に「アスペルガー症候群」と告知され、絵本『アスペルガーの心』を描いたフワリさんと、フワリさんのずっとそばにいた妹のキラリさんが、大人になった今、この絵本について語ってくれています。
*フワリさん・キラリさんにご寄稿いただくにあたりましては、『アスペルガーの心』の偕成社編集者千葉美香さんにご尽力いただきました。ここに御礼申し上げます。
編集:教育と医学の会 発行:慶應義塾大学出版会
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隔月刊 発売日:[紙版]偶数月27日 [デジタル版]毎奇月1日
価格:[紙版]840円 [デジタル版]760円
特集子どもを危険から守る──犯罪・非行・事故への対応と支援
以下「立ち読み」から
特集にあたって2024年7・8月
「危険」から「自律」へ
蓮澤優
本号では「子どもを危険から守る」ことを主題として、多様な専門領域の論者の方々にご寄稿いただきました。
子どもが遭遇する危険には実にさまざまなものがあります。
人口動態調査によれば、不慮の事故による子どもの死亡数は近年微増しています。二〇二二年の統計では、一四歳以下での死亡総数は二、五八四人、そのうち不慮の事故による死亡数は一八一人でした。なかでも溺水による死亡は上位を占めており、特に水辺で遊ぶ機会が増えるこれからの季節、最も注意すべきものになります。本号所収の山中龍宏氏の論文では、実践的な助言も含めわかりやすく論じていただきました。
事故に遭うことと並んで、子どもが犯罪に巻き込まれるリスクも考えられます。そうしたリスクから子どもを守るため、まずは実際に起こっている犯罪の実像を正確に認識しておく必要があります(越智啓太氏論文)。また、子どもが関与する犯罪類型のなかでも近年目立つのはインターネットやSNSを介したものです。今日の子どもは〇歳の時点からすでにインターネットに触れていると想定して、適切なペアレンタルコントロールを行ってゆく必要があるといいます(池辺正典氏論文)。
子どもを狙った性犯罪もあとを絶ちません。二〇二四年五月二三日には、いわゆる「日本版DBS法案」が衆議院本会議で可決されました。同法案は、教員や保育従事者の性犯罪歴の確認を事業者に義務づけ、前科がある場合には業務に従事させない措置を講じるよう求めるものです。同法案については、性加害を行った人の社会復帰を妨げるとの批判もあり、この点で慎重な議論の継続が求められますが、子どもの性被害低減のうえで一定の効果が見込めることは確かだと思われます。野坂祐子氏の論文では、子どもの性被害の実態からケアのありかたに至るまで、多面的に、わかりやすく論じていただきました。
他方、卯月由佳氏の論文では子どもの非行が論じられています。非行の構造的背景として貧困問題があります。その意味で非行は、当該の子どもの個人的資質の問題には決して還元しえず、むしろ社会的セーフティネットの問題です。非行の要因を生み出している社会の側が、非行に関わった子どもに対する責任を負うという視点からの教育的支援が重要である、と卯月氏は論じています。