ここから読み上げブラウザ用のメニューです ニュースへジャンプします おしらせへジャンプします メインメニューへジャンプします 読み上げブラウザ用のメニューの終わりです
ここからメインメニューです

ごあいさつ

 

ようこそ、バリアフリー絵本の世界へ

ここはバリアフリー絵本に関するコミュニケーションネットです。

 

バリアフリー絵本とは何でしょうか?

 

2011年に刊行された絵本の事典(朝倉書店)で、私は「バリアフリー絵本とは、絵本を楽しむ事にバリアがある人たちに、そのバリアを取り除き、楽しみやすくした絵本、またはそのバリアを理解し、環境や配慮を整えることを目的に作られた絵本」と記述しました。そして、バリアフリー絵本は4つに分けて考えるとわかりやすいことを、今まで随所で述べさせていただいてきました。

 

(1)絵本にある障害バリアを超えるために、特別な配慮を加えて作られている絵本 【FOR】

(2)障害バリアついて知る、理解する絵本【ABOUT】

(3)当事者によって制作された絵本【BY】

(4)障害バリアのあるなしにかかわらず、ともに楽しめる絵本【WITH】

 

このうち、(1)のFORと(2)のABOUTという分類については、1981年にユネスコとIBBY(国際児童図書評議会)が企画した“本と障害児展”のときに発行された展示本の解説付きカタログ(Ørjasæter, Tordis’Books and disabled children’ The International Board on Books for Young People 1981)の<はじめに>の文の冒頭に<books for and about disabled children>ということばが使われているのが出典になります。(forとaboutの下線も当時から引かれています。)(3)BYと(4)WITHという分類については、国内で世界のバリアフリー絵本展を巡回しながら、開催者とのやりとりなどから考えていったものです。

その分類を紹介した先行資料としては「日本のバリアフリー絵本–その現状と可能性」 (絵本学会紀要 絵本学8 2006)で、バリアフリー絵本の種類を「特別なニーズのある子どもたちのための(FOR)本・特別なニーズのある子どもたちについて(ABOUT)の本・特別なニーズがある子どもたちによって(BY)作られた本」と3つで説明し、『絵本の事典』の「障害と絵本」(朝倉書店2011)でも、その種類を「バリアのために(For)特別に作成される絵本, バリアについて(About)描かれている絵本、バリアのある人たちによって(By)作成された絵本」のこれも3つに分けて説明しました。

FORに含まれるバリアフリー絵本として、日本では以下の絵本が現在あるととらえています。

 

【視覚表現である絵本がもつバリアに対応するFOR絵本】

さわる絵本

手で見る絵本、指で読む絵本などともいわれる。絵の素材に近いさわり心地の触素材を貼り付けて、絵を構成したものや、点図や立体コピーで絵を描くものなどがある。多くの場合、視覚障害のある幼い子どもたちが対象である。さわる絵本の中に布絵本や点字つき絵本も加える分類の仕方もある。

点字つき絵本(貼り付け型・インターリーブ型) 

文の表記に点字が加えられている絵本。通常の活字の近くに点字が印刷されている場合や、タックペーパーなどで点字が貼ってあるもの、インターリーブというページの間に透明シートを挟みこみ、そこに点字が打たれているものがある。

てんやく絵本

 文の点訳だけではなく、絵の形に透明シートを切り取って貼り、その説明の点字を加えてある絵本

点字絵本

文は点字のみ、絵は点図で描かれている絵本。

*「点字つき絵本・てんやく絵本・点字絵本」に関しては、同じ様式の絵本でも、用語が不統一な段階である。

 

【ことば・文字がもつバリアと、情報の混乱がひきおこされるというバリアに対応するFOR絵本】

布絵本 

布絵本とは台紙が布で出来ていて、そこに様々な布・フェルトなどで作った絵を綴じ付けたもの。障害がある子どもたちのために作成されている場合は、一部の絵がマジックテープ・ボタン・スナップ・ファスナー・ひも・などで、取り外しや移動ができる。また、とめる・はずす・くっつける・ひっぱる・むすぶ・ほどくなどの手指操作が、遊びながらできるように工夫されている。障害がある子どもたちのために創られている布絵本は、現状は殆どが手作り作品であり、オリジナルな作品の場合と市販絵本を布の絵本化したものとがある。紙媒体の図書への導入、あるいは、操作を楽しんでできることから、手指の訓練や遊びながら認識を高める事を狙った作品や、絵がページを動いてつながる特長を生かしたストーリーや作品、お話の動作化や空想の立体化ができる事を生かした作品などがある。布絵本も制作団体によって、布の絵本・布えほん・布のえほん・布の本など、呼称は統一されていない。

手話つき絵本・手話で読む絵本 

手話が文に加えられている絵本。動画(DVD)を使って手話で語っている絵本やイラストで手話が加えられている絵本がある。イラストでの加え方には様々なアプローチがあり、全文を手話に訳してあるもの、キーワードを手話で表しているもの、イラスト全体が手話を使って構成されているものなどがある。手話を覚えるための本ではない。

絵文字つき絵本 

絵と文のほかに、絵文字などの非言語的コミュニケーションシステムで単語や概念が絵記号によって表現されているものが加えられている絵本。認知障害や言語障害、読字障害などがある場合、視覚言語が加わる事でより理解がしやすくなる。

音声つき絵本 

文や絵を音声で伝えるために、CDなどが付随している絵本。

LLブック(やさしく読める図書) 

わかりやすく書かれた本を必要としている人たち(障害のある人たち、異文化間を移動したために自分の母語でないその国の使用言語に対して理解力や読解力が不足している人たち等)のために、内容・絵・言語・レイアウトを工夫・配慮して作る。生活年齢にあったテーマで書かれている。絵本というジャンルでとらえるべきかはまだ研究が進んでいない。

 

日本の子どもたちの現状と、その子どもたちにとって絵本とは何なのでしょうか

 

人は環境も含めて自分自身だといいます。今の日本の子どもたちは、どういう環境の中に育っていくのか、そしてその子どもたちを育てている親はまたどんな環境で育ってきたのか、今の子どもたちの読書の有り様や、絵本の役割を、その事を考えることなく論じる事はできないと考えます。

生まれた子どもは、食事や衛生や保温などの面倒だけでは育たないことは、発達心理学や乳幼児保健学上、もはや既得の事実です。だっこをしたり、話しかけたり、愛情をもった関わりがないと、子どもは育たないのです。また子どもを育てる側の養護性(今は母性とはいいません)は、育てる側にとっては、後天的な学習で獲得されることも周知のことです。そしてその養護性は、子どもとのタッチコミュニケーション(ケア)をすることが、その獲得に重要なこともわかってきました。

今の日本の子どもたちが育つ環境のなかで、何が一番危機に直面しているか、それは生まれた直後から、あるいは胎児の頃から出発する、人と人との対面やぬくもりのある関わりや向き合い、関係性の育ちの困難さではないかと思います。

本は子どもたちにとってどういう役割を果たしてきたのでしょうか。字を読めること本を読めることは、様々な知識や情報を正確に平等に得ることができます。私の祖父母や父母の時代、子どもにとって、本はまず識字や教科書として大きな役割を果たしてきました。私の子ども時代になると、そうした知識のための読書ばかりでなく「本を開けば楽しい世界」がありました。そして私自身の子育て中に、絵本の今日的な大事な役割である、図書館や絵本に子育てを応援してもらっている実感がすでにありました。

かつて読書はどちらかというと、人との関係を育てるというよりも、個人が向き合うものだったかもしれません。でも今人は本を手にとるとき、そこに何を求めることが多いでしょうか?新しいことを知ることやお話の楽しさももちろんですが、多くの人が癒しや自分への共感、自己確認を求めてはいないでしょうか。また幼い子どもたちなどと一緒に絵本を読んでいると、絵本を読んであげる側・手渡してあげる側にも「幸せ観」があるのも、多くの人が実感することではないでしょうか。

そんな絵本の力は、どんな子にも大事なものでしょう。「絵本の喜び」は、すべての子どもたちに自分の手の中に掴んでほしいものです。一見、絵本があふれている日本の環境にあってなおまだ「自分にまなざしが向けられている絵本」 「the Right Book」がない子どもたち、絵本を楽しむことに障害バリアを持たされている子どもたちが、日本でも多数存在していることを、決して見過ごさないでほしいと願います。本を楽しむ権利はすべての子どもにあるものです。権利というものは、1人の例外があってもいけないものなのです。

  また、日本社会にバリアフリー絵本という絵本が登場し、なかったものがあるようになってよかった、というステージから、もう一つ上のステージに上り、バリアフリー絵本はいまもまだ十分な数があるわけではなくとも、今子どもたちに届けられている「バリアフリー絵本」でいいのか、真に子どもたちの絵本のバリアを超えて、子どもたちのために(For)が実現しているのか、ほかの絵本のように芸術的な文学的な絵本が実現しているのか、歩みが進んできたからこその次のステップにも歩みを進めたいと願います。

 

このバリアフリー絵本のコミュニケーションネットが、絵本の障害バリアを超えて、すべての子どもたち(Every Children)に、絵本の喜びを届けることに少しでも活用いただき、役に立つならば幸いです。

 

2021年4月 バリアフリー絵本HP運営者

攪上久子(バリアフリー絵本研究会・公認心理師)


 


この文は次の言語で読めます: 英語