人魚になりたかった少年・ジュリアンの物語『Julian Is a Mermaid』翻訳出版のための、クラウドファンディングにご協力を!
https://greenfunding.jp/thousandsofbooks/projects/3217
書名:Julian Is a Mermaid
著:Jessica Love
発行国:アメリカ合衆国
発行年:2018年
ボローニャ・ラガッツィ賞(伊)、ストーン・ウォール賞大賞(米)受賞作
主要テーマはLGBTQ(注)ですが、声高でなく柔らかな描き方が素敵な絵本です。
プロジェクト発起人は世界のバリアフリー絵本展・児童図書展カタログの翻訳のご協力をしてくださったりIBBY Outstanding Books Of Young People With Disabilities
から2冊の邦訳書を翻訳刊行してくださった翻訳家の横山和江さんです。
『わたしの心のなか』 シャロン・M・ドレイパー/作 横山和江/訳/すずき出版
『ウィッシュ――願いをかなえよう!』フェリーチェ・アリーナ/作 横山和江/訳 講談社
(注)LGBTQとはLesbian (レズビアン=女性同性愛者)・Gay (ゲイ=男性同性愛者)・Bisexual (バイセクシャル = 両性愛者)・Transgender (トランスジェンダー = 身体上の性別に違和感を持った人)・Queer(クィア=セクシュアルマイノリティ全般を表す)もしくはQuestioning(クエスチョニング=性自認や性的指向を定めない人)の頭文字をとったものです。
<プロジェクトの応援メッセージから>
表紙のJulianの誇らしそうな輝く姿!
子ども達は、みなこの世に喜んで生まれてくる。ところが生まれた社会には、すでに様々に人を区別したり生き方を制限するような「線」がある。
男の子として性別を区別されるのであろうJulianは、人魚の美しさにあこがれて人魚の世界で過ごす自分に安らぎを感じている。自分も人魚になりたい!とその思いを素直に実行に表していく。そして人魚になった誇らしい姿が表紙のJulianであろう。
いのちや思考の有り様は、2項対立で考えたり2分割できるものではなく、グラデーションやスペクトラムな状態なものであり、男女の区別もグラデーションであるのに、世間は男女で2区別できるはずと思い込んでいないだろうか。
Jessica Loveは、声高にそんなことを叫んでこの絵本を描いてはいない。彼女は生まれてから育った環境の中で、また現在居住する地域の中で、いろいろな人たちが実際に友達であり仲間であったようだ。社会から引かれている「線」があっても、その線の無意味さの中で生きてきたのだろう。Jessica Loveが、のびやかに、しあわせそうに描くJulianと、はじめは普通にとまどう感覚も持ち合わせたのであろうが、受け止めて認めていくNana(世間的には祖母に当たるひとだろう)がなんとも素敵だ。
横山和江さんはこの絵本に一目ぼれしたとおっしゃっている。その気持ちがよくわかるほど、Julianは生きることに向かって輝いている。(攪上久子)