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野馬追文庫(南相馬への支援)五

山内薫(墨田区立あずま図書館)

 二月一二日の日曜日、福島市にあるコラッセふくしまを会場にJBBY子どもの本講習会が開かれた。この講習会は「子どもともっと本を楽しみたい!より深く子どもの本について学びたい!とお考えの方に向けて、子どもの本で世界をつなぐ活動を続ける日本国際児童図書評議会(JBBY)と、子どもの読書活動を支援する出版文化産業振興財団(JPIC)が開催します。」(開催案内)というもので、二〇一一年度は一〇回開催されている。プログラムは、「作家が語る一冊の本(仮)」と題して、絵本作家や児童文学作家などが自身の創作の舞台裏、創作に込めた思いなどを語る「特別講演」、「もっと子どもの本を楽しもう」と題してJPIC読書アドバイザーが読みきかせや紙芝居など、子どもと一緒に本を楽しむための大切なポイントや選書のヒントを話す「講義」、そして「本との出会いを広げるために」と題して、子どもの読書をめぐる日本や世界の動きを伝える「情報提供」の三部構成になっていて福島の他、 宮崎、福井、滋賀、鳥取、愛知、長崎、和歌山、秋田、群馬と文字通り日本全国で開催されている。二月に開かれた福島の講習会では、はじめに『グリックの冒険』『冒険者たち』などの著者、斉藤惇夫さんが特別講演を行い、その後の講義をKさんが行った。講義の内容は臨床発達心理士としてスクイッグル遊びというプレイセラピーをつかって絵本に内在するセラピー性について話されたとのことだった。Kさんは折角福島に行くので是非南相馬にも立ち寄りたい、ついては南相馬市立図書館のHさんに連絡が取れるようなら取りたいと要請を受けた。講演日の翌日は月曜日で図書館が閉まっており、前日一一日の土曜日ならば、丁度毎月本を届ける日に当たるので自ら車で仮設住宅に本を届けたいとのことだった。

「ちょうど、一一日なので、いつも宅急便で送っているのですが、わたしどもの<あしたの本>で持っている図書館バスで、もって行くことにしました。現地のRさんにもご了解いただきました。二四箇所を二時間ほどで回れるとの事です。」

 また、Kさんが南相馬市立図書館のHさんに会って伝えたり確認したいことは以下の四点で、この点については私からもHさんにメールで伝えた。

「○図書館から仮設に貸し出したり提供している本もあるだろう、その様子を知りたいこと
○今後の支援の予定を伺えたら伺いたいこと
○今次々に震災、特に放射線に関しての子供向けの本などが、出版されている。これらを図書館に是非備えてほしい。もし予算が間に合わないようなら、<あしたの本>で購入寄贈することも可能。
○布の絵本・拡大写本を少し寄贈してきたい」

 このような準備の元にKさんは南相馬市立図書館でHさんと会い、仮設住宅も数カ所まわってこられた。

 二月の本として選んだのは八〇〇ページ近くの大部な『藤子・F・不二雄大全集』の『ドラえもん 一』(小学館 二〇〇九年)と『だいくとおにろく』(松居直著、赤羽末吉絵 福音館書店)で、前回紹介した仮設住宅の本棚にマンガが一冊もなかったことから、何かマンガをと選んだのが、ドラえもんで、最新刊と第一巻の両方に目を通し、ドラえもん誕生の経緯がわかる第一巻にしたのだった。

 福島から戻ったKさんからのメールには次のように記されていた。
「昨夜、福島から戻りました。行くときは福島まで、新幹線。後は福島在住の友人の車で南相馬へ。友人が線量計を持たせてくれました。飯館・川俣などニュースで聞きなれた地名、そこでも刻々線量の変化があり、ときどきピーと警告音。そこは両脇に木が生い茂っているようなところを通過するとき。南相馬は意外と福島市などよりも線量が少ない。こんな貴重なことも友人のおかげで体験してきました。一度にはここには書ききれないほど、たくさんのことを心につめました。南相馬の空はとても美しい。でも寂しい、空虚な空気に満ちていました。生き物の生き生きした気配がない。一一日でしたが、私たち以外のボランティアとは、仮設のどこでも出会いませんでした。今窓口になってくださっているRさんはじめ社協の皆さんは本当によく付き合ってくださって、感謝のみです。Oさんも会議の前に駆けつけてくださって、やっぱり顔を合わせて、手をにぎりあって、それで交わした言葉はこれからの支援の支えでしょう。

 図書館バスとは現地で落ち会いました。二四箇所全部回る予定でしたが、図書館バスに寄ってきてくれる人がいたり(本は無料でプレゼントしました)オープン型の集会所では、係りの方がお茶を接待してくれたり・・・で。結局九箇所!ごめんなさい。

 結論を言うとはじめに行った一箇所のみ、ずいぶん本があったのですが、後は先日の写真(前号掲載)の状態とほぼ一緒。ラベルの本は中央図書館からの廃棄本。二箇所で、本への要望を聞いたとき、上中があって下がない、というような声がありました。「ドラえもん」みなすごいといってくれました。

 現在二八箇所に、仮設が増えています。四セット増やす方向で考えます。

 南相馬市中央図書館は信じられないくらいのすばらしい図書館でした。ぜひ山内さん行ってみて!日本の宝かも。建物も図書も何の被害もなかったが、職員は半分もいない。しばらくは、もうだめだと(心が)死んでいたとHさん。福島はもう国から見捨てられているともいっていました。でもこの図書館への図書購入費などの予算は、減らされるどころか増えたといっていました。市の幹部の図書館への理解・愛着が大きいようです。なので、図書の寄贈などは必要ないようでした。業務もサービスも今少ないマンパワーでやっているので、<あしたの本>の仮設の支援はよろこんでくださっているようでした。結局二時間も、同行したJBBYの他の者も交えてお話やら見学をさせてくれました。」

 Kさんが出したお礼のメールにOさんから次のようなメールが届いた。

「お会いできて嬉しかったです。バスもすてき!でした。継続して、ご支援いただけることは私たちの勇気にもつながります。今後も、できうる範囲でご支援いただければありがたいです。本当に、お会いしたことの無い方たちから、静かなしっかりした支援をいただいていることに感謝しています。また、お会いできるような気がしています。」

 また、Kさんのメールに答えて南相馬市立図書館のHさんは

「K様
メール、ありがとうございます。中央図書館の設計者、寺田芳朗氏がいかに優れた方であるかが証明された気がしています。昨日とおとといは、図書館がにぎわいをみせています。鹿島の仮設住宅の方も、カードを作りにみえました。また、県外に避難している方が、一時帰宅の帰りに寄ってくれました。かなり疲れているようでしたが、図書館がよりどころになっていくことの重要性を痛感しています。Kさんのおっしゃるとおり、南相馬の誇りをとりもどすために図書館が輝きを失わないよう、期待にこたえていこうと思います。
 また、お会いする日を楽しみにしています。H」という返信を下さった。

 Kさんが南相馬市を訪れた二〇一二年二月一日現在の南相馬市の仮設住宅は三三ヶ所で戸数は二、五八一に上る。中には六戸、一八戸、二二戸などの少数の仮設住宅もあるので、そのうち二八ヶ所に集会所があるものと思われる。またこれらの仮設住宅に入居している〇歳から一〇歳までの子どもの数は、流動的ではあるがおおよそ三〇〇名弱だとのことだ。仮設住宅の子どもの数は思ったほど多くはなく、高齢者が多いのではないかと思われる。毎月一一日に送る本は絵本を中心とした子どもの本だが、読者層は子どもに限ることなく、広い世代を想定する必要がありそうだ。

 なお、三月一一日は『放射線になんか、まけないぞ!』(坂内智之文、木村真三監修、柚木ミサト絵 太郎次郎社 二〇一二)と『はなをくんくん』(ルース・クラウスぶん、マーク・サイモントえ、きじまはじめやく 福音館書店 一九七四)を二八ヶ所に発送した。


横浜漢点字羽化の会発行「うか」に連載