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野馬追文庫(南相馬への支援)十九

点字から識字までの距離 一〇一
野馬追文庫(南相馬への支援)(十九)
二〇一四年に届けた本と送り先の変更(下)
山内薫

 翌週にはOさんから再び次のようなメールを頂いた。
「K様 いつも、南相馬市の仮設集会所へ素敵な絵本をお送りいただきありがとうございます。震災から三年以上たち、集会所に配本いただくようになって、もうすぐ三年になります。ずっと、継続して支援していただけることは、被災地にいる人間にとっては、とても勇気になっています。

 今回は、保健センターにもアンパンマン折り紙や絵本をお届けいただき、感謝しております。まだ、五歳未満のお子さんの帰還率は三六%くらいにとどまっていますが、少しずつ増えています。放射線量は当然ながら下がっていますが、それに関する不安を口にすることがタブーにならないよう、かといって、外部から、そんな所に子供を住まわせるなんてかわいそうだ、などと、一方的に言われる不条理さを感じないですむような環境ができるといい、と考えることがあります。まだまだ、先の長い復興ですが、だれもが笑顔で過ごす時間が多くなるように・・・・・・と願って仕事をしています。」

 そして翌月の7月には『スーホの白い馬』(大塚雄三再話、赤羽末吉画、福音館書店)を送った。

 Yさんは次のようなメッセージを下さった。
「『スーホ』は子ども達にとって本当に良い本を・・・・・・の信念が伝わる良い絵本だと思います。この本は、幼い時に読んだ記憶が大人になってから様々な体験をしたことによって、やっと本当の意味を理解できる深い本だと思います。幼いうちはすべて理解できないかもしれませんが、このような世界を知って大人になるのとならないのでは、まったく違うと思います。

 おととい(七月五日)に福島県主催の読書フォーラムにパネリストとして参加してきました。県内の学校図書館などの子どもの読書に関わる場が今、大きく変わる時期に来ていることを肌で感じてきました。ボランティアの方を始め、多くの人が福島の子どものために活動していることを改めて実感し、私も正規の児童図書館員として、より一層頑張らなければと奮起するよいきっかけともなりました。フォーラムでも話をしてきましたが、『良い読書環境は周りの大人によって作られていく』『質の良い読書が、その後の読書人生の基盤になる』という信念を持ち続け、私自身が良い本にたくさん出会って、それを子どもたちに一冊でも伝えていけたらいいなと思います。」

 八月は本を送り始めて丁度三年目の節目となり、Kさんは次のような意見を添えて『はしれ ディーゼルきかんしゃ デーデ』(すとうあさえ 文、鈴木まもる 絵、童心社)を推薦された。

「八月分、この本を提案させてもらいます。ぜひ読んで、ご意見聞かせてください。テキストの作者すとうさんは、ジネットの方です。私のひとつ先輩。被災地支援のことで、特にお話したことはないのですが、面識はあります。もちろん、この本以外にご提案ありましたら、お願いします。
『三・一一の直後、東北に石油や灯油を届けるために、ディーゼル機関車が活躍したのをご存知ですか?全国から集められたディーゼル機関車たちが、新潟から福島の郡山へと走ったのです。最初に出発したのが、デーデです。途中、雪でスリップし、立ち往生してしまいます。なんとか郡山に着いたときには、予定の時刻を、三時間過ぎていました。それでも、みんな待っていてくれ、とても喜んでくれました。実話が元になった絵本です。
 三・一一東日本大震災で、東北本線、東北新幹線、東北自動車道ともに不通となり、東北への輸送が絶たれました。その時、中越地震を経験していた新潟のJR貨物の方たちを中心に、燃料を届ける取り組みが始まります。電気の通っていない磐越西線を使うため、全国からディーゼル機関車が集められます。また、燃料は横浜の根岸から新潟の貨物ターミナルに運ばれます。運転士さんも急遽ディーゼルを動かす研修をして、震災から二週間、三月二六日にディーゼル機関車が一〇両のタンクをひいて出発したのです。』(http://www.doshinsha.co.jp/search/info.php?isbn=9784494025619童心社のホームページより)」

 この提案についてYさんは
「八月分ご提案についてですが、当館にもこの本は所蔵しておりましたが、お恥ずかしながら目は通していませんでした。このご提案を受けて、読んでみたところ、正直涙が出ました。あの三・一一後の異常な燃料不足によるパニック状況を思い出しました。車のガソリンを入れるために何時間も並んだあの悪夢のような状況を・・・・・・。今でも鳥肌が立つような思いです。でも、確かにあの時、リアルタイムでこの機関車が新潟から郡山に向かっているということを聞いていて、「こんなときでも被災地を助けようと必死になっている人達がいるのだ」とあの混乱時にも感動したことを思い出しました。そして、本当に郡山に燃料を積んだ第一号が到着したということを聞いたときは、「これで助かる!大丈夫だ!」と確信できました。福島の人にとっては、この話はどんな話よりも身に迫ってくるものではないでしょうか。あとがきにもありましたが、縁の下の仕事を黙々とする人たちがまだ日本にはたくさんいる、日本はやはり捨てたもんじゃないと勇気の出てくるお話ですね。よい本を紹介してくださってありがとうございます。」

 Kさんからは「すとうさんは奇しくもジネットの方なので、この機会に連絡をとってみましたら、とても喜んで下さり、野馬追文庫にはいつも何か協力したかったので、この機会に寄贈させてくださいというので、ありがたくお受けいたしました。メッセージと本にサインもいただけることになりました。」といううれしいメールを頂いた。

 この絵本には送り先からも
「『デーデ』の絵本は、あの震災当時の大変な状況を思い出しながら、『こうだったね~』などと職員間で思い出したり、デーデの優しさ・力強さに感動しながら読ませていただきました。子どもたちばかりでなく、私たちスタッフにもお気遣いいただき大変うれしく思っております。」(南相馬社協のTさん)

「デーデの絵本ありがとうございます。これ、私の!と言って読みだしたのですが・・・。こんな機関車がいてくれたのですね。絵本の作者の方は、Kさんの同窓の方なのですね。ありがとうございます。感謝してもう一度読ませていただきます。そしたら、職場のみんなに読んでもらいます。」(保健センターの保健師Oさん)などの感想が届いた。

 Kさんも「 共通本は私たちのメッセージですので、これからも選書してお送りしたいと思います。それぞれの場所で子どもたちを支えてくださっているスタッフの方に読んでいただくようなつもりでもいいかなと思っています。今回のデーデの本は特にそんなふうに思いました。」
 ここで出てきた「共通本」だが、この言葉の背景には次のような事情がある。

 丁度本を送り始めて丸三年が経過したが、今まで通り三六カ所の仮設住宅の集会所に本を送り続けていくことの再検討が必要ではないかという話が出ていた。そんな折に南相馬市の社会福祉協議会の担当者がRさんからTさんに代わり、以前お願いしていた子どもの数のアンケートが返送されてきたが、そこに添えられた手紙には「子どもたちも狭い仮設住宅の環境になれながらも伸び伸びと生活を送れていない状況です。その中で野馬追文庫の支援は大変喜ばしいことです。今までたくさんの本を支援して頂き各仮設集会所の本棚も一杯になり、今は巡回しながらおあげしています。大変申しづらい内容ですが、本の数量を減らして頂けたら有り難いです。苦労されて支援して頂いているのに失礼をお許し下さい。」と書かれていた。KさんがTさんに電話をしたところ、現在、送られた本は仮設住宅の集会所には配本されておらず、巡回の折に差し上げているけれど、仮設住宅の方たちも余り本に関心を持っておらず、読んでいる人もほとんど見ないという状況説明があった。本音ではもう本は送らないで欲しいというニュアンスも感じられたとのことだった。

 そこで今後の送付方法については以下のようにすることになった。
 まずは仮設住宅用に社会福祉協議会のTさん宛に「共通本」と幼児・小学生・中学生・高校生・大人用の本を各一冊。そして、この三年のあいだに南相馬で知り合った以下の四カ所に本を基本二冊送ることにした。この四カ所についてはこちらで選書するだけではなく、希望の本があるときにはその希望に逢うようにすることになった。
・きっずサポート「かのん」(放課後等デイサービス)
・じゅにあサポート「かのん」(放課後等デイサービス)
・ちゅうりっぷ文庫(Gさんが主宰している家庭文庫))
・原町保健センター(保健師のOさんが勤務している))

 きっずサポート・じゅにあサポートの「かのん」の「放課後等デイサービス」というのは、二〇一二年から始まった制度でそれまでは通所支援事業所が行っている障害児のための学童保育所のようなものだ。それまで障害児(一八歳未満)への支援は児童福祉法と障害者自立支援法という二本立てで行われてきていたが、二〇一二年四月から児童福祉法に根拠規定が一本化され、障害児施設の一元化をするためにできたのが通所支援事業所で、この法改正の基本的な考え方は「身近な地域で支援が受けられるよう、どの障害にも対応できるようにするとともに、引き続き、障害特性に応じた専門的な支援が提供されるよう質の確保を図る。」と説明されている。(障害児支援の強化について-厚生労働省)

 早速「かのん」からは大型絵本、ちゅうりっぷ文庫からは布の絵本、保健センターからは〇~一歳用絵本という希望が来た。

 ところでTさんが送ってくれた仮設住宅に住んでいる子どもの数だが、二〇一四年(月は不明)現在で三十カ所の仮設住宅に住んでいるのは、幼児が九〇人、小学生が一八〇人、中学生が九七人、高校生が八三人、大人が五三〇七人という結果だった。

 九月に送った本は、共通本が『りんごかもしれない』(ヨシタケシンスケ著 ブロンズ新社)。

南相馬市社会福祉協議会へは「一〇月に仮設、借上げ住宅に入居されている未就学児親子交流会を開催する予定があり、その時にプレゼントしたいと思っております。参加者二〇組程度が集まるのではないかと予想しております。よろしくお願いいたします。」という要望に応えて、親子就学説明会用に『くんちゃんのはじめてのがっこう』(ドロシー・マリノ著、まさきるりこ訳、ペンギン社)

 放課後等ディサービス「かのん」には、 よみきかせ大型絵本 『グリーンマントのピーマンマン』( さくらともこ作、 中村景児絵 岩崎書店)と匂う絵本『ともだちカレー』(きむらゆういち作、江川智穂 絵、世界文化社)

 原町保健センターには『くだもの』(平山和子さく、福音館書店)と 『3さいのえほん のりもの』
(沢井佳子監修、講談社)の二冊。

 ちゅうりっぷ文庫には、布の絵本『おおかみと7ひきのこやぎ』(ぐるーぷ・もこもこ制作)を送った。

 一〇月は、共通本として『ちからたろう』(今江祥智文、田島征三絵、ポプラ社)。

 「かのん」からはリクエストのあった大型絵本『だるまさんが』(かがくいひろし作 ブロンズ新社)
ちゅうりっぷ文庫には紙芝居の『ちからたろう』(川崎大治作、滝平二郎絵、童心社)

 一一月は、『どんぐりかいぎ』(こうやすすむ文、片山健絵、福音館書店)を共通本として送った。 また保健センターからは先月「かのん」に送った『だるまさんが』(かがくいひろし作 ブロンズ新社)の要望があったので送った。ちゅうりっぷ文庫にはその他に赤ちゃん絵本を数冊お送りした。

 一二月の共通本『サンタクロースっているんでしょうか?』(ニューヨーク・サン新聞社社説、中村妙子訳、東逸子絵、偕成社)についてYさんから次のような推薦があった。

「私は初めてこの本を読んだ時に、子どもの素朴な質問にこんなに真剣に答えてくれる大人がいるというのは、子どもにとってどんなに幸せなことだろうと思いました。家のちびさんも最近は『これ何?これ何?』を連発して、しかも同じものを何度も聞くものですから、親としては『さっきも言ったでしょ!』と言いたくなりますが、そこは我慢我慢と何度も同じ答えを繰り返しています。こうやって、子どもたちは自分の知らない世界に興味を持ち、自分の世界を広げていくのでしょうから。親として、子どもの好奇心を育てていきたいと思います。子どもの素朴な疑問にきちんと答えられる大人でありたいと思います。そして、福島の子どもたちにはやはり夢をもってもらいたい。サンタクロースという夢を持ち続けてほしいと思います。あくまで、私見ですので、他に候補がありましたら、どうかそちらを優先させてくださいね。

 福島はとても寒いです。仮設にお住いのみなさん、この寒さは堪えるだろうなと心配しています。もう間もなく4年にもなるのに、こんな生活を余儀なくされているのは、本当にお気の毒としか申し上げられません。選挙よりも被災者支援なのでは?と最近の情勢を見るにつけ世の矛盾を感じます。せめて、子どもたちには本というともしびで心だけはあたためてほしいですね。」

 「かのん」のNさんからは「職員からは、クリスマスのふしぎなはこ(長谷川 摂子作、斉藤俊行絵、福音館書店)や一〇〇にんのサンタクロース(谷口智則作、文溪堂)などがリクエストされました。」とのことで二冊の絵本と「ぐるーぷ・もこもこ」制作のクリスマスツリーとオーナメントを併せて送った。
 また、原町保健センターには、大型絵本『きんぎょがにげた』(五味太郎作、福音館書店)を送った。

 ちゅうりっぷ文庫には今まで長い間本を送り続けて下さった高知こどもの図書館から寄贈して頂いた最後の寄贈本約三〇冊を送り、児童館にも分配して頂くこととした。その本はGさんが市内三ヶ所の児童クラブに配本してくださった。