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野馬追文庫(南相馬への支援)十三

点字から識字までの距離 九四
野馬追文庫(南相馬への支援)(十三)
     墨田区立ひきふね図書館 山内薫
南相馬へ(五) 「かのん」訪問」

 二〇一三年も押し詰まった一二月二六日と二七日、ゆめ基金のイベントで、Kさんと絵本作家のTさん、そして翻訳家のNさんの三人が、南相馬の障害児通所施設「じゅにあさぽーと『かのん』」へ行き支援を行った。Kさんがその報告を寄せて下さった。併せて同行した翻訳家のNさんの<あしたの本>への報告と「カノン」の所長NさんからのKさん宛のメールもご紹介する。

<Kさんの報告>
 一昨日・昨日と南相馬に行ってきました。
 夜中に雨が降りましたが、日中は良いお天気でした。福島から峠を超えるまでの川俣から飯館のあたりは雪が結構積もっていて、峠から先は雪がありませんでした。
 夏に行ったとき、飯館などの畑にも想像よりも作物が植えられていましたが(試験栽培とも伺いましたが)、今回は工事があちこちでされてる様子と、人が戻ってない家は、朽ち果て始めている様子が印象的でした。
 クリスマスの気配も年末の気配もバスが通った周囲にはありませんでしたが、南相馬市内に入ったら、イルミネーションがきれいについていたり、お飾りなども見られました。
 南相馬では、昨年山内さんと仮設をお邪魔したときにお世話になった社協のS生活相談員が出迎えてくれました。昨年一緒に訪ねた視覚障害の女性は今もお元気で読書が相変わらずとても生きがいになっているという嬉しいお話をしてくださいました。
 もうひとり、Wさんを彷彿とさせる??どこに住んでいるのか不明なエロ話がちょっと好きな愉快なボランティアのおじさんと三人で、大木戸大鹿仮設、(ここは一番新しい仮設ですが、あまりお子さんは住んでないとか)のサロンに。今日はクリスマスパーティーでクレープを焼くとか。
 スタッフに女手はいないなと張り切って手伝おうとしたら、(クレープなんて洒落たものは私には焼けませんが)、自立支援ですから、見守ってくださいと、Sさんに囁かれました。
 どんどん住民が集まり、ワイワイおしゃべりと笑い声、みなさんが元気になっているのが分かりました。相馬流れ節の見事な喉も披露され、私は、野馬追文庫でもお送りした紙芝居『かさじぞう』を読ませていただきました。皆さんじっと聞いてくださいました。
 ただし、この仮設は出来て一年ですので、紙芝居が一冊もありませんでした。多分そうだろうと、紙芝居は図書館から借りて持って行きました。本は私たちの野馬追の寄贈本が一番多かったですが、そのほかに伊勢崎良い本を送る会というようなシールが貼ってある本と、シールなどは特に貼ってない普通の寄贈本が本棚に並んでいました。
 みなさんの明るさは、諦めてしまった落ち着きでもあるのだと思いました。もう前のようにいつ帰れるのかとか、早く帰りたいとかでなく、もう帰れないだろうと・・・・・・
 だからここにいる人たちと、仲良く生きていくんだというような、そんな雰囲気でした。
 一人とても張り切ってリーダー格で動いていた女性は、私が一番若いから・・・と一生懸命みなさんを盛り上げて雰囲気を作っておられました。どんなできごとを通り抜けた方なのかわかりませんが、今のその姿にちょっと涙が出ました。
 皆さんボランティアにはとても暖かくて、小高の泥だらけでめちゃくちゃな家を何日もボランティアさんが片付けてくれた、自分たちではとてもできないことだったと、でもそれでもやはりその家にはもう住めないだろうと・・・・・・、でもありがたくてありがたくてと、何度も私に頭を下げておられたおばあさん。
 国がやるべきことを、こんなにありがたがってお礼を言わなればならないって、なんだろう・・・・・・。
 そのあとは「かのん」によって、スタッフの皆さんとあすの打ち合わせや、準備をしました。
 ホテルに行くと絵本作家のTさんと、翻訳家のNさんも到着していて、三人で最後の打ち合わせ。
 特に、Tさんのキラキラバッチのワークは、下ごしらえの手間が半端ではなく、ほんとに、どんなに準備が大変だったろうと、頭が下がりました。前の晩は、絵本の仕事で完徹だったとか・・・・・・
 お二人ともやはり障害のある子どもたちが、どれだけお話などに集中してくれるのかとても不安だったようでした。
 となりのホテルで忘年会のあるOさんが、私たちのホテルにかけつけてくれました。
 震災直後は車が一台もすれ違わず一〇分もかからないで来れた道路が、今日は二五分もかかっちゃった~といいながら・・・・・・。相変わらず素敵なOさん 南相馬の放射線量はとても下がっていると。そのために日々奮闘しているんだものね、地域保健のために働いている保健師Oさん。
 次の日は、早くから子どもたちが来てくれました。いろいろな子どもたち。障害の重い子どもたちは相馬養護の子どもたち。肢体不自由のある子どもたちは、原発で登校できなくなった富岡養護からの転校生も。震災直後、心理士会でこの子どもたちの避難所や仮設の生活の困難さが話題になっていましたので、元気な姿が見れて嬉しかった。知的には高い発達障害の子どもたちは、うしろのほうにつるんでかたまってすわってこっそりカードゲームしてたり・・・・・・。でも、みな一生懸命こちらの問いかけに向き合って答えてくれて、お話の世界を楽しんでくれていました。総勢五〇人くらいの方が集まってくださいました。朝日新聞の取材がありました。
 そして、高知こどもの図書館からはたくさんお心のこもった折り紙が届いていましたので、会のはじめにご紹介し、お土産に持って帰ってもらいました。飾りのような作品は、かのんで使ってもらうためにお渡ししてきました。
 チューリップ文庫のZさんにチラシをお送りしたので、駆けつけてくれました。お仲間の他の文庫の方も一緒に。中央図書館の読み聞かせのボランティアさんたちです。仮設でのおはなし会は、まだされてないとか。日常の文庫や図書館のおはなし会は頑張っておられるようでした。いつか野馬追文庫と連携して何かできるといいですねとZさんとお話してきました。
 社協のSさんが南相馬の中に出来た別の自治体の仮設、浪江町の方たちが住んでいる仮設を車で通ってくれました。管轄が違うので、全く中のことは分からないと・・・・・・。日本って、なんでも線を引くと、きっぱり分かれてしまう国なんですよね。そして仮設に住んでいる人たちというのをみなさんは震災の被害者で皆いい人たちと思っているかもしれないけれど、そうでないような反社会的な人たちもたくさんいるんだと、ポツリと生活相談員としてもご苦労のお話も。
 かのんのNさんも、仮設に住んでいると支援で生活ができるために、それでそこにとどまる人たちもだんだん多くなっていると言うような話も。南相馬に少しずつ若い人も戻ってきてはいるが、やはり人口比はお年寄りと障害児者が多くとどまっているのではと言っておられました。支援の必要度がとても高い人口比だと。
 私たちは震災後の人のいなくなった南相馬と比べて今は~~とみますが、南相馬の人たちは震災前の南相馬を知っているので、やはり今の南相馬を寂しく悔しく、元気になったなんてとても思えないようでした。でも頑張っているのは南相馬の人たち自身。自分たちの生活のために立ち上がっている。その姿がくっきりとみえました。それがこの一年の私の一番の実感でもありました。南相馬の人たちの立ち上がり。かのんもまさにそういう場の一つ。長くなりましたが、今後の野馬追文庫の選書の参考にしてください。
 どうぞ皆さん良いお年を。
 そして来年もよろしく。K

<翻訳家Nさんの<あしたの本>への報告>
 一二月二六日。福島駅から、雪に覆われた川俣町、人気のない飯館村を経由して、五時三〇分ごろ南相馬に到着しました。通常はガラガラのバスが、なんと満席!きっと、年末のせいでしょう。街道には行きかう車も多く、簡素なイルミネーションに彩らた南相馬の街は、昨冬より活気がありました。
 じゅにあさぽーと「かのん」は、きっずさぽーと「かのん」の分室として、今年八月に新しく開園した施設です。放課後や学校が休みの期間に利用され、日ごろから音読を通して、子どもたちに感情を読み取るすべを伝え、表現を育てています。 ここには、ADHD,アスペルガー症候群のお子さんが多く、所長のNさんによれば、「対人関係を構築するスキルを学ぶための事業所」だそうです。子どもたちに対するのと同じくらい、保護者への働きかけを大切にしていて、「悩みながら子育てするお母さんたちの、”駆け込み寺”みたいなところ」だと聞きました。一二月二七日一〇時、いよいよイベントが始まります。三五名ほどの、幼児から中学生までの子どもと保護者をまえに、Kさんが「<あしたの本>プロジェクト」の内容を説明したあと、Tさんと私を、「みほちゃん先生」「えっちゃん先生」として紹介してくれました!
 私が紙芝居を三本演じたあと、Tさんが『オムライス、ヘイ!』と『ありんこぐんだん、わはははははは』を読み聞かせ、その後、事前に何日もかけて用意した材料を広げて、「キラキラバッジ」の作り方を伝えました。がんこちゃんの絵を選ぶ子もあれば、ステンドグラスみたいなバッジを完成させる子も。大人気の絵本作家Tさんに一目会いたいと、地元の読み聞かせグループの方たちも駆けつけました。一時間半のプログラムのあいまあいまに、Kさんがいい具合に手遊びを入れて、子どもたちの緊張を解きほぐしました。
 障害のある子どもたちと聞いて、「この紙芝居ではむずかしすぎるかも」、「バッジ作りを理解してもらるだろうか」と事前に気を揉んでいたのが、嘘のようです。紙芝居を演じながら「さあ、なんだろう」と呼びかければ、「ロボット!」と元気よく答え、会場と私たちの橋渡しをてくれた男の子が、実はコミュニケーション障害を持つ子だと、後から聞いて、びっくり。Nさんはこう言っています「今日は、よっぽど嬉しかったんでしょうね。私たちも相当がんばっていますが、単調な日々なので、こうして外から人が来てくれることが、みんなほんとに嬉しいんです」とも。
 最後は、全員すてきなキラキラバッジをつけて、大満足の記念撮影です。
 帰りは、Nさんの運転で、仮設住宅をいくつかまわり、津波が押し寄せた海岸線も見せてもらいました。復興住宅の建設が遅れて、仮設住宅(野馬追文庫で毎月本を届けている三六箇所)はなかなか減りません。ほかにも東電の補償額の差が、子どもたちの関係にもひびを入れてしまうなど、心が痛む話もたくさん聞きました。なお当日は、朝日新聞南相馬市局長のH氏の取材もありました。 N

<「かのん」の所長NさんからKさんに届いたメール>                    
  <あしたの本>K様
 優しいお心づかい大変ありがとうございます。正直、皆様との出会いからまだ興奮が冷めない状態であります。とっても素敵な時間をありがとうございました。今回、年末年始休暇・初めての九連休を頂きました。本を読んだり・推理ドラマを見たり、旅行したりとあっという間の九日間でしたが、今までになく何とも充実した毎日を送ることが出来ました。
 考えてみれば、この2年間ただがむしゃらに・・・・・・突っ張って・・・・・・精神的な余裕を持つことなどあえて拒否し、避けながら・・・・・・ただ、ただ必死に生きてきたような・・・・・・。今回、全く気持ちに余裕がないのに、余裕があるふりをし、人に優しくないのに優しいふりをしてきた偽善的な自分を、少しではありますが客観的に見つめ直すことが出来たような気がします。
 「時」は心を優しく変え、「絵本」は、人の心を豊かにし、「言葉」は、コミュニケーション能力を向上させる・・・・・・素敵なツールだと思います。
 今年は、自分も子どもたちに恥ずかしくない大人に成長できるよう、この素敵なツールを生かさせて頂きながら、心新たに頑張って行きたいと思います。K様たちとの「出会い・絆」をこれからも大切にさせてください。遠くて大変でしょうが、また、遊びに来てくださいね。
 かのん N