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野馬追文庫(南相馬への支援)四

山内薫(墨田区立あずま図書館)

 一月一二日に生活支援相談室のRさんから次のようなメールと写真がKさん宛に届いた。

「Kさま
 昨年は大変お世話になりました。
 今年は復興に向けての計画が、どんどん進んでいただきたいのですが、
 南相馬市は………まだまだ大きな課題が山積で国や県・行政、関係機関も大変だとは思いますが、頑張っていただきたいと思います。
 K先生の講演会の資料も同封していただきましたので、広報させていただきます。
 それから、今までご支援いただきました図書の設置場所の一つである、小池第一応急仮設住宅集会所内の写真を添付いたしました。
 今後ともよろしくお願いいたします。
 社会福祉法人 南相馬市社会福祉協議会 生活支援相談室 R」

 添付された写真は一月一二日に撮られたもので、仮設住宅の集会所の中に設置されたスチール製の本棚が写っている。五段に仕切られた本棚の二段目と三段目に本が収納されており、我々が送った野馬追文庫の本、二四冊と紙芝居一組は二段目の右端にまとめられている。八月から一二月までに送った本で書架にないものは『二年間の休暇』で、どなたかが持って行って読んでいると思われる。

 八月に一斉に送った『はじめて読む童話集(三)』、『そらにげろ』、『トリゴラス』の他に書架に見られる本は『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』(バートン作、福音館書店)、『いっすんぼうし』(長谷川摂子作、岩波書店)、『できるかな』(エリック・カール作 偕成社)、『ぐりとぐらのえんそく』(中川李枝子作、福音館書店)、『三びきのやぎのがらがらどん』(マーシャ・ブラウン作、福音館書店)、『マリールイズいえでする』(ナタリー・サヴィッジ カールソン作、童話館出版)、『ちいさいおうち』(バートン作、岩波書店)『もりのおかしやさん』(舟崎 靖子作、偕成社)、「チャイルド絵本館―伝記ものがたり」の中の『モーツァルト』(間所ひさこ著)と『ヘレン・ケラー』(武鹿悦子著、ひさかたチャイルド)、『ねこいるといいなあ』(さのようこ作、小峰書店)『はれときどきぶた』(矢玉四郎著、岩崎書店)、さとうわきこ作の「ばばばあちゃんのおはなし」シリーズから『いそがしいよる』『どろんこおおそうじ』『あめふり』(福音館書店)の三冊、そして『ハートのお菓子ノート』(学研)の一六冊が図書館のラベルを貼っていない本で、このうちの多くが最初に送られた一〇冊に含まれるものだと思われる。

 その他に背表紙に図書館ラベルの貼ってある本が七一冊あり、これは南相馬市の図書館から団体貸出で貸し出しされている本だろう。『生きることの意味』(高史明作、筑摩書房)や『マヤの一生』(椋鳩十作、大日本図書)などの児童書の他、門田泰明の「黒豹ダブルタウン」の文庫本が七冊、アルダス版講談社自然シリ-ズの『極地の生命』などが五冊、手芸や工芸関係の実用書が二〇冊ほど(なぜか革手芸の本が三冊もあってうれしくなる)、マップルやるるぶが五冊、日本人作家の小説が八冊ほど見られる。(五木寛之、氷室冴子、高杉良、三田誠広が二冊、林京子、光野桃、水上勉、その他に文庫本では赤川次郎が二冊、渡辺淳一が見られる)

 さらに入所者などから持ち寄られたとみられる文庫本や単行本が一六冊あり、その中に東日本大震災をテーマに詩と写真で構成された高橋桂子著の『果てなき荒野を越えて』(三宝出版))が並んでいる。二段目と三段目の書架はこれら一二七冊の本で一杯になっている。

 書架の一番上の一段目にはCDラジカセとCDが一枚置かれていて、そのCDには「一,相馬盆唄、二,相馬流れ山、三,相馬二編返し、四,会津磐梯山、五,ラジオ体操第一、六,ラジオ体操第二」というラベルが貼られている。地元の民謡もラジオ体操も集会室で身体を動かすために使われているのかと思う。

 書架の四段目にはティッシュペーパーの箱が六箱、ちいさいタオルが数枚、団扇が三つ、「うつくしまふくしまふるさとカレンダー二〇一二年」とその下にもカレンダーらしきものが置いてある。

 そして一番下の五段目には「ライフパックCR Plus」というAED(自動体外式除細動器)とその取扱説明書が置いてある。AEDは最近は駅など様々な場所で見かけるようになっている機器で、「様々な原因で心臓が痙攣を起こしている傷病者(患者)の心電図を測定・解析を行ない、必要に応じて電気ショックを与え、血液を送り出すための正常なリズムに戻すための医療機器で」「電器ショックが必要とされるか否かは、AEDが心電図をみて自動的に判断」するもので「使用者に専門的な医療知識は必須では」ない。「心肺蘇生に必要なその他の手順も音声などにより指示が出される為、心肺蘇生法について専門領域の知識がなくても利用可能なようにサポートしてい」るという機器である。(「」内はこのAEDの発売元であるメドトロニック フィジオコントロール社のホームページよりの引用)おそらく各仮設住宅の集会所には全て設置されているのだと思われる。

 また写真でははっきり読み取ることができないのだが「○○○○ どうぞご活用下さい」と表紙にはり紙されたファイルが置いてあり、そこにいくつもの文書がとじられている。(どうも就職情報と書いてあるように見えるのだが、読み取ることはできない。)

 そして本棚の外の壁際に電気掃除機が置かれている。

 この一枚の写真によって私たちが送った本がどのようなところで活用されているのかがよく分かった。今までにも現地に送られる前の本や仮設住宅の集会所で紙芝居を読んでいるところ、三歳児健診で布のおもちゃで遊ぶこどもの写真などが送られてきていたが、今回書架を見ることで、送った本のイメージが鮮明になったのだった。

 Kさんはこの写真を見て書架にマンガが一冊もないので、二月に送る本の一冊は『ドラえもん』でどうかとメールを下さった。ドラえもんには火山の噴火など自然災害を状況として取り上げたものもあるのでどれが良いか選んで欲しいと言われた。実は、たまたま小学館の児童書を手がけておられる編集者の方とこのところ何度かお会いする機会があったので、その方に伺ってみたところ、現在刊行中の『藤子・F・不二雄大全集』が良いのではないかというアドバイスを頂き、第一巻と最新刊の第一六巻を送って頂いた。第一巻では一九六九年の『小学四年生』に載った次号の予約から、翌一九七〇年一月号から始まった連載の一九七四年三月号までの作品が収録されており、なぜドラえもんが未来から現在にやって来たかが分かるようになっているので、八〇〇ページ近くある第一巻を送ることに決めたのだった。そして、もう一冊は『だいくとおにろく』(松居直・著、赤羽末吉・絵、福音館書店)にした。

 RさんのメールにもあったようにKさんは、二月一二日の日曜日に福島市にあるコラッセふくしまという会場でJBBY子どもの本講習会の講師をなさることになっていて、今回は郵送で送るのではなく、図書館バスで届けたいと次のようなメールを下さった。

「二月分のことなのですが、私が二月一二日に、子どもの本講習会の集いで、福島市にいきますので、その前日南相馬市の空気を感じてくる予定でいます。それで、ちょうど、一一日なので、いつも宅急便で送っているのですが、わたしどもの<あしたの本>で持っている図書館バスで、もって行くことにしました。Rさんにもご了解いただきました。二四箇所二時間ほどで回れるとの事です。」また「前日一一日に先に南相馬に行ってこようかと、今考えています。午後になりますが、図書館は駅前のようなので、Hさんをご紹介いただけますか?特に用事があるというわけではないですが、仮設に図書館の本のような図書もありましたし、南相馬全体の本の支援の様子など伺ってきます。少し今後のことなどのアドバイスもいただければうれしいですし。」という。

 Hさんは南相馬市図書館の副館長で、Wさんに私の名前を出して下さった方である。震災直後は南相馬市中央図書館も休館しており、その間は図書館から離れ復旧支援の仕事に回っていらしたが、八月六日の開館に向けて再び図書館に戻った方だ。早速メールで今回のKさんの福島行きについて連絡して、Kさんを紹介した。

 Kさんには現地の様子を知らせる写真をたくさん撮ってきて欲しいとお願いした。

 なお、一月一一日には、詩集の『てつがくライオン』(工藤直子著、理論社)と絵本『おもちのきもち』(かがくいひろし著、講談社)の二冊を二四箇所の仮設住宅に送った。


横浜漢点字羽化の会発行「うか」に連載