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NICU(新生児集中治療室)の赤ちゃんの絵本をつくったご両親

cotta pecco作 三恵社 2019 1550円+税

作者cotta pecco(こったぺっこ)について
「こったぺつこ」とは北海道の方言で「ちょっぴり」という意味。
絵描きの妻「yuko」と、自称なんでも屋の夫「ボス」の夫婦ユニット。

(以下は作者のブログhttps://ameblo.jp/wanchanmen429/より、本人の許諾を得て一部編集して転載させていただきました。)

この作品は私の子どもが生まれ、新生児集中治療室(NICU)に入院している時に描いた作品を、今度は病の子を持つお母さんに向けて再編成して描き直したものです。

どうしてわざわざ入院している子に、絵を描いたのか。
私の子は生まれる前に検診で異常が見つかりました。
肝臓の肥大や、心臓の肥大。
その原因として、ダウン症の合併症の可能性がありますと言われました。
出産後の検査でやはり、ダウン症であることは確定。
それより何より、肝臓の病が重くとても心配な状況でした。
でも、ダウン症をもつ我が子を眺めながら、
いつかはモザイク画の職人にしよう。
きっと没頭するに違いない。

なんて思って、色々な美しい色を見せたいなと思った。
それで、やっぱりお母さん、つまり私の絵を見せてあげたかった。
だから即席でじゃばらの絵本を作って、
とにかくいろんな色で、そして面会に行っては見せていました。

その時生まれた絵本が産んだ作品がこの『くもりのちひかり』でした。

             
私も子どもも、入院している間に感じたこと。
病院の中のコンビニにお買い物に行く時に、少しだけ外に出るんです。
ある日外に出た瞬間「まぶしい!」って思いました。

その時にNICUのわが子はまだおひさまのまぶしいも、
北風の寒っ!も、みんな知らないんだな。って感じたんです。

まぶしいを教えてあげたい。

そんな想いを抱えて、院内の図書館をうろうろしていると
いわむらかずおさんの『14ひきのあさごはん』という絵本をみつけました。
朝の光や、
ごはんのにおい、
川の流れる音や風。
家族とすごすってことの、音や温度。
見るというより、感じるってことが
こんなにこんなに繊細に盛り込まれているんだなぁと感激した。

いわむらかずおさんの14ひきシリーズを色々借りてはNICUへと面会に行きました。
まだ保育器に入っていたから、保育器に絵本を乗せて見せてあげたんです。
ページをめくっては保育器に乗せ、読んであげる。
朝の空気や、夏の川の涼しさ、明日は冬を教えてあげようなど
絵本を抱えて会いに行きました。
とにかく色々見せてあげなくては。

肝臓の病が重く、退院の目処もたたないわが子にすこしでも沢山のものを見せたい。
もう必死だったし、焦ってもいた気がする。
だって、この子との明日がある保証なんてないじゃない。
そんな気持ちだったんだと思う。
たくさんの押し込めた不安な気持ちを、押し込めすぎて
当時はどのくらい不安だったかも分からなかったと思う。

私にとってこの曇りの雲はどれだけ分厚かったのかなぁと振り返る。

まだ私も入院中のことだ。
院内で大騒ぎして、泣きじゃくる小さな男の子を見て「大変だなぁーお母さん」と妙に可笑しくて笑ってしまった。それと同時に涙がポロポロ出てきた。
自分でもなんで涙が出たかもわからずびっくりした。
今思えば、元気に泣いて親を困らせること。
それさえ、できるのかわからなかった。
そんな大きな心の雲があった。
あの時の心の雲は雨雲だったんだな。

NICUからの面会を終えて自分の部屋に戻るとき
「また来るよー!」と声をかけた。
包帯でぐるぐる巻きの右手がぱっとひらいた。

まだまぶしいも、寒いもしらない我が子。
おはようも、おやすみも知らない我が子。
その子が私の「また来るよ」に
ぱっと手をひらいたのが、偶然じゃないといいなと思った。
ふっと心に降るひかり。まぶしいくらいのひかりだった。
曇りがあるから雲間の光がこんなにまぶしいんだな。愛しいくもりもあるんだ。

(ccota pecco さんのお子さんは、135日間NICUで精一杯生きて、楽しい時間の思い出をもって、お星さまになられました)