ここから読み上げブラウザ用のメニューです ニュースへジャンプします おしらせへジャンプします メインメニューへジャンプします 読み上げブラウザ用のメニューの終わりです
ここからメインメニューです

野馬追文庫(南相馬への支援)十二

点字から識字までの距離 九三
野馬追文庫(南相馬への支援)(十二)
南相馬へ(四)

 南相馬でお預かりした乾千恵さんのリトグラフ「馬」を軸装する件で元墨田区の音訳者で表装を勉強しているというHさんに連絡を取って、「馬」を見て頂いたが、リトグラフで刷られた紙はかなりの厚さがあるために軸装するには紙を薄くしなくてはならず、Hさんにはその技術はないとのことで、表装の先生を紹介して下さることになった。このリトグラフについては、乾さんご自身も次のように述べられていた。

 「「馬」の書のことですが、あの書は横長ですし、紙も厚め、それに洋紙なので軸装は難しいのでしょうね。色々な所へあの書たちは行っていますが、図書館などでは、額(手作りの軽い額状のものも)などに入れて置いてもらっています。床の間にもこの状態で、掛けて下さっている方もいらして、それはそれでしっくり落ち着いています。また、みなさんで(楽しんで)考えて頂けると嬉しいです。」(二〇一三年一月のメール)

 Hさんが紹介して下さった日本表装美術協会の会長をなさっている野崎さんという方が、たまたま墨田区役所に来られる用事があり、そのついでにあずま図書館に寄って下さることになった。一月二九日に早速リトグラフを見て頂き軸装が可能であるというお返事を頂いた。四月に南相馬市立中央図書館で開かれる乾千恵の書展に間に合うように三月中には仕上げて頂きたいこと、南相馬の図書館が緑を基調とした色で統一されているので、緑色の生地を使って欲しいことをお願いした。実際に南相馬市立中央図書館で撮ってきた写真、特に椅子に使われている「薄いグリーン」と「深い青みがかったグリーン」を見て頂き、色見本として携帯で写真を撮って帰られた。

 三月のはじめに野崎さんから連絡があり、やはり墨田区近辺に用事があるので二一日に持ってきて下さるということになった。軸装に使われた絹の生地は左側が緑がかった青で、ぼかしによって右側のグレーと繋がっており右側五分の三程が絹の光沢を抑えたグレーになっている。リトグラフの縦の長さのほぼ二、五倍くらいの長さの布のやや下部に表装されたリトグラフが位置している。なおこの掛け軸は桐の箱に納めて頂いた。

 この間、あずま図書館からひきふね図書館への引っ越し作業がようやく終わり、ひきふね図書館の開館セレモニーが行われた三月三一日の
日曜日に浦和のDさんのおつれあいが軸装された「馬」を取りに来られた。

 いよいよ四月九日から一四日までの南相馬市立中央図書館での「乾千恵 書展 『月人石』の世界」が開催される。書展の案内には「展示 千恵さんの一三枚の書、川島敏生さんの一四枚の写真、谷川俊太郎さんの一三のことば」とあり「絵本『月人石』(福音館書店)は、書道家、写真家、詩人の競作です。乾千恵さんの『書』は『扉』『猫』『風』『音』『馬』『影』『水』『石』『火』『山』『蟻』『月』『人』の一三文字。漢字の意味を書体で表現するだけでなく、動と静、大と小。自由で迫力のある書に感動します。この書に写真家川島敏生さんの『写真』が加わり、その力強い字が画面一杯に躍動する写真があります。そして、それぞれの『書』に詩人の谷川俊太郎の『ことば』が添えられています。」と記されている。
 四月九日(火)から一四日(日)までの日程はTさんから次のように報告があった。

 八日 浦和のKさんたちが、書と一緒に車で、南相馬入りして下さいます。
 九日 朝一番に搬入、クラフトルームで展示-図書館友の会の方が手伝って下さいます。
    午後 仮設住宅集会所の平日定期サロンへ書を持ってKさんたちがお話会
 一〇日午前 仮設住宅集会所の平日定期サロンへ書を持ってKさんたちがお話会
    午後 Kさんたち浦和のグループは埼玉へ帰途
 一一日午前 大阪グループ到着
    午後 友の会との交流会
一二日午前 仮設住宅集会所の平日定期サロンへ書を持ってお話会
   午後 仮設住宅集会所の平日定期サロンへ書を持ってお話会
一三日午前 仮設集会所を会場として予約してのお話会の開催=友の会のメンバーとご一緒に。
一四日午後 四時に撤収

 友の会というのは南相馬市立図書館の図書館友の会で正式な名称は「としょかんのTOMOみなみそうま」という。
 期間中の具体的な内容についてTさんからメールで次のような報告を頂いた。

「南相馬のご報告遅くなり、申し訳ありません。本日午後五時前には、埼玉から南相馬へ書一式、『馬』の掛け軸、と『呼』を持って、埼玉からKさん他三人、川崎からSさん、八尾からHさんが到着しました。
 明日は、開館三〇分前に開けていただき搬入、ともの会の方のお力も借りて、午前中に展示の予定です。午後は、Kさん、Sさんが、お話し会を図書館でしてくださいます。ともの会や、絵本と童話の会の方が、お話し会を体験したいとのことです。このごろは、図書館のおはなし会には二名程しか子どもたちの姿がないようです。
 一〇日午前と午後には、『馬』の掛け軸と、『呼』を持って、仮設の定期サロンに行くことになっています。午前中は、たまたま、山内さんと昨年ご一緒したイオンの近くのあの仮設です。午後は、原町の借り上げ住宅の方々の集まりだそうです。
 一〇日夕方に、埼玉グループは帰路へ。
 一一日に、大阪からYさん、お話しの語り手富田林のHさん、羽曳野のTさん、豊中の子ども文庫のWさん、八尾の図書館友の会のKさん、吹田図書館友の会のHさん、私が午前中に到着予定です。午後は、図書館見学とともの会の方々との交流会。
 一二日、午前、午後は、仮設集会所へ二班に分かれての定期サロン訪問、
 一三日は、子どもの一番の多い仮設を、図書館ともの会の方がさがしてくださり、原町絵本と童話の会のSさんとご一緒にお話し会を開催します。
 仮設の自治会長Tさんが、Sさんの教え子であったりして、社協を通さずに直接いろいろお話しすることになりました。
 その周辺の仮設四〇〇軒にチラシを配って下さることになりました。
 子どもたちがほっこりとした時間を過ごせるようにしましょうとのSさんのご意見で様子を見ながら、プログラムを決めていくことになりました。 
 また、大阪弁の絵本とかを紹介してもらうと楽しいのではないかと言って貰い、お話し、手作りを用意しています。
 千恵さんのお知り合いが北上市から一三人でお見えになり、南京玉すだれなどもしてくださることになっています。
 若い自治会長のTさんは、何か飴をもらえるみたいなものがほしいですね、と言われました。大阪名物をさんざん考え、たこやきせんべいも試しましたが、むかしからの岩おこしを持っていくことになりました。余談ですが、買い物に行ってくれるOさんが、子どもの頃、お葬式の道端で岩おこしを供養のためにと言って、配る習わしがあったそうです。 
 一四日午後に撤収します。
 ともの会の通信をご覧になったこの図書館を設計した寺田さんは、以前どこかの図書館で千恵さんの書をご覧になったことがあり、書の力強さに、被災地の方々が力をもらえる、南相馬にぴったりの企画だとのお声を寄せて下さいました。」

 会期中たまたま福島県立図書館のSさんが協力車で南相馬市立中央図書館を訪れ、次のようなメールを下さった。

「九日(火)は、新地町図書館、相馬市図書館、南相馬市立中央図書館、一〇日(水)は、伊達市立図書館、福島市立図書館、二本松市立二本松図書館、本宮市立しらさわ夢図書館へ、県立図書館の協力車を運転して巡回していました。南相馬市立中央図書館では、ちょうど「乾千恵の書展『月人石』」開催の初日だったので、昼食時間を利用して、ゆっくり見ることができました。乾千恵さんの書に添えられた川島敏生さんの写真、谷川俊太郎さんのことばが、書のイメージを広げてくれていました。
とてもすてきな展示会でした。」

 会期中会場に置かれたノートには様々な感想が寄せられていたので以下にいくつかを紹介したい。

「力いっぱいに書かれた?描かれた文字のタッチを見て、毎日楽しく暮らす力をもらえた気がしました。きっと生き生きと楽しく描いていらっしゃるんでしょうね良い機会をいただきました。期間中また見に来たいです。」
「書は人を見事にあらわしてますね!とてもステキで力強いです!ありがとう。」
「しばらくぶりでワクワクしました。文字から元気をいただくなんて思いがけなかったです。ありがとう。」
「『扉』うれしかった。左側のノとなったところから外の世界が開かれる予感が・・・・・。久々に心がおどりました。ありがとう!」
「すばらしい書を拝見し、今、自分の中で気持ちが不安定だったのが、背中を押されたような気がし、ホッと一息つけたように思いました。『生』という書のハガキをいただきました。今、私の兄や義姉が自分の生命と闘っています。この書は心の中にずっしりと入り込みました。千恵さんの書に出会えたことに感謝です。ありがとうございました。
「今日は北上から一七人のメンバーで来ました。書の世界に見入ってしまいました。命を入れて心で書いている様子が見る人を引き込んでしまいました。蟻の虫音、羽の動きまでも伝わって参りました。本当に感動です。」
「私も大阪に今年の三月まで住んでいました。自分がいま何を感じているのか、何を考えようとしているのかを、表現することの大切さを、日々感じています。南相馬に帰ってきてそれを痛切に思います。誰かの作品や表現されたものを目の前にして、自分自身の中で感じた事を語り合う、胸の中にとどめておく・・・・・・。いつか、ふと思い出すこともあるかもと思う。作品の前に立つと音楽の中に入っていくかのような気持ちになります。不思議です。また作品を見に来ます。」
「すてきな書展をどうもありがとうございました。福島は原発の放射能の問題で、子供を持つ身には悩ましい事が多いのですが、久しぶりに心が元気になった気がします。」