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バリアフリー絵本とは

 

 

障害がある子どもたちに対して特別に制作がされる絵本や、障害について描かれている絵本は「バリアフリー絵本」と呼称されてきました。バリアフリーデザインになっている絵本や、ユニバーサルなアクセスを持つ絵本があると、本を読むこと楽しむことに「バリア」がある子どももそうでない子どもも絵本を読み、楽しむことができます。
バリアフリー絵本という言葉は、英語由来のものではありません。2002年に国内の障害がある子どもたちの関係の本を集めた展示会を企画・巡回 するにあたって、その展示物の絵本を総称する名前として使いました。さらに2003年から巡回を開始した国際児童図書評議会(International Board on Books for Young People)障害児図書資料センター企画の展示会を,「世界のバリアフリー絵本展」というタイトルで巡回いたしました 。私は展示会企画に関わりバリアフリー絵本という言葉の発案や普及に関わってきた経緯があります。近年では出版社や図書館、書店等で「バリアフリー絵本」という用語を使っているところも多くなりました。


1 「バリアフリー絵本展~みんなで読もう・遊ぼう・楽しもう!~」(主催:バリアフリー絵本展実行委員会)は2002年5月から2003年3月末まで国内20か所巡回。2000年当時は、障害児関係の本の展示会をすると、「障害児図書展」というような呼称になることを避けたいと考えた。

2 現在「世界のバリアフリー児童図書展」と展示会タイトル変更はしたが、巡回は継続している。主催は日本国際児童図書評議会 = Japanese Board on Books for Young People (以後JBBYと表記)筆者は展示会実行委員長を務めてきた。

 

バリアフリー絵本とは、「障害がある子どもたちのために配慮あるデザインで作られている絵本と、障害について描かれている絵本」です。
当初から、バリアフリー絵本を大きく三つに分けて考えてきました。「障害がある子どもたちのための本」【FOR】と「障害について描かれている絵本」【ABOUT】と「障害がある人たちによってつくられた作られた絵本」【BY】の三つです 。

1,障害がある子どもたちのための【FOR】絵本

(1)視覚表現である絵本がもつバリアに対応するFOR絵本
さわる絵本
手で見る絵本、指で読む絵本などともいわれる。絵の素材に近いさわり心地の触素材を貼り付けて、絵を構成したものや、点図や立体コピーで絵を描くものなどがある。多くの場合、視覚障害のある幼い子どもたちが対象である。さわる絵本の中に布絵本や点字つき絵本も加える分類の仕方もある。
点字つき絵本(貼り付け型・インターリーブ型)
文の表記に点字が加えられている絵本。通常の活字の近くに点字が印刷されている場合や、タックペーパーなどで点字が貼ってあるもの、インターリーブというページの間に透明シートを挟みこみ、そこに点字が打たれているものがある。
てんやく絵本
文の点訳だけではなく、絵の形に透明シートを切り取って貼り、その説明の点字を加えてある絵本
点字絵本
文は点字のみ、絵は点図で描かれている絵本。


3 この分け方はいずれもIBBYの展示会でのカテゴリーやジャンルの分け方から学んだものである。最初の二つの分け方は、1981年にユネスコとIBBYが企画した「本と障害児展」のときに発行された展示本の解説付きカタログの<はじめに>の、冒頭の文の中にすでに<books for and about disabled children>ということばが使われている。forとaboutの下線も当時から引かれている。三つ目の【BY】についても、日本で最初に展示会をしたカタログのやはり冒頭に「children’s books of different categories and genres for, about, and by young readers with special needs.」という記述がある。

*「点字つき絵本・てんやく絵本・点字絵本」に関しては、同じ様式の絵本でも、用語が不統一な段階である。

(2)ことば・文字がもつバリアと、情報の混乱がひきおこされるというバリアに対応するFOR絵本

布絵本
布絵本とは台紙が布で出来ていて、そこに様々な布・フェルトなどで作った絵を綴じ付けたもの。障害がある子どもたちのために作成されている場合は、一部の絵がマジックテープ・ボタン・スナップ・ファスナー・ひも・などで、取り外しや移動ができる。また、とめる・はずす・くっつける・ひっぱる・むすぶ・ほどくなどの手指操作が、遊びながらできるように工夫されている。障害がある子どもたちのために創られている布絵本は、現状は殆どが手作り作品であり、オリジナルな作品の場合と市販絵本を布の絵本化したものとがある。紙媒体の図書への導入、あるいは、操作を楽しんでできることから、手指の訓練や遊びながら認識を高める事を狙った作品や、絵がページを動いてつながる特長を生かしたストーリーや作品、お話の動作化や空想の立体化ができる事を生かした作品などがある。布絵本も制作団体によって、布の絵本・布えほん・布のえほん・布の本など、呼称は統一されていない。
手話つき絵本・手話で読む絵本
手話が文に加えられている絵本。動画(DVD)を使って手話で語っている絵本やイラストで手話が加えられている絵本がある。イラストでの加え方には様々なアプローチがあり、全文を手話に訳してあるもの、キーワードを手話で表しているもの、イラスト全体が手話を使って構成されているものなどがある。手話を覚えるための本ではない。近年海外では、QRコードから手話動画を見ることが出来る絵本が刊行されている。
絵文字つき絵本
絵と文のほかに、絵文字などの非言語的コミュニケーションシステムで単語や概念が絵記号によって表現されているものが加えられている絵本。認知障害や言語障害、読字障害などがある場合、視覚言語が加わる事でより理解がしやすくなる。
音声つき絵本
文や絵を音声で伝えるために、CDなどが付随している絵本。
LLブック(やさしく読める図書)
わかりやすく書かれた本を必要としている人たち(障害のある人たち、異文化間を移動したために自分の母語でないその国の使用言語に対して理解力や読解力が不足している人たち等)のために、内容・絵・言語・レイアウトを工夫・配慮して作る。生活年齢にあったテーマで書かれている。

2,障害について描かれているバリアフリー【ABOUT】絵本

絵本はメディアであり、絵本を通して異文化や多様な人の在り様を学ぶことができる。障害を適切に理解するための絵本や、障害をポジティブに描く絵本、インクルーシブな社会に向かう道筋を示していくような絵本は、全ての子どもたちにとって必要なバリアフリー絵本でしょう。絵本からは、「社会や文化や歴史のドキュメント」の役割を見ることもできます。さらにこの中には、当事者がその作者である絵本もあり、それをバリアフリー【BY】絵本とくくることもできます。
バリアフリーデザインが施され、出版に特別なコストが生じるわけではないこれらの絵本は、出版そのものには特殊なバリアはありません。(そのテーマが読み手も関心をそそり、売れるかどうかは別ですが)。しかし近年、その絵本に描かれている「障害」当事者にも、その絵本が読みやすいようにと、バリアフリーデザインを施す絵本、つまりバリアフリー【FOR】絵本と重なるような絵本も見られます。またその逆に【FOR】絵本が、障害の理解に活用されていく場合も増えてきています。
また、一般の絵本からFORのアプローチを知ることで、多様な子どもたちが楽しめる絵本を見出すことができます。この視座もとても大切で、【FOR】【ABOUT】【BY】に加えて、障害(バリア)のあるなしにかかわらず、ともに楽しめる絵本、バリアフリー【WITH】絵本と4つにくくってバリアフリー絵本を説明することもあります。

3,バリアフリー【WITH】絵本

この【WITH】絵本は “世界のバリアフリー絵本展・児童図書展”の展示でのユニバーサルアクセスというカテゴリーから学びました。 このカテゴリーの本は、一般向けに販売されている本のなかでも特に、学習障害や知的障害、発達障害のあるすべての子どもが利用しやすい工夫がされています。絵や写真が大きいもの、字体が大きいもの、対象年齢のお子さんにあったテーマでありながら内容を理解しやすい文章で書かれているものなどがあります。ストーリー展開や言葉遣いが読みやすい作品は、年齢や理解力に関係なく楽しめます。デザインやアート性に優れた絵本は、障害の有無にかかわらず、見る人を楽しい世界にいざなってくれる。一般向けに販売されているということは、書店で広く入手でき、図書館でもだれもが利用できるという大きな利点があります。

バリアフリー絵本研究会 攪上久子


 


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