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一平の大旅行

澤村 祐司

 一平は小学校5年生。

 夏休みに田舎のおじいちゃん、おばあちゃんのうちに来ていました。

 砂浜で貝をひろったあと、波の音を聞いていると「一平さん、一平さん、クラゲー」と声がしました。

 見ると、そこには一匹のクラゲがいました。

 「ボクはクラ太郎という名前のクラゲです。クラゲー。一度私達の国へ行ってみませんか。クラゲー」

 クラゲ語は言葉の最後にいつも「クラゲー」と付くのでした。

 一平は面白そうなので、付いて行くことにしました。

 「それでは、この飲み物を飲んでクラゲー」と小さな瓶を一平に差し出しました。

 飲んでみると、一平は自分の身体の十分の一の大きさまで小さくなってしまいました。

 クラ太郎は「私の国へご案内しますから、私の背中にお乗りください。クラゲー」

 こうして一平とクラ太郎はクラゲの国へと出発しました。

 海の中にもぐっても不思議なことに一平は全然息が苦しくありません。

 それはきっとあの飲み物の中に、海の中にもぐっても苦しくない薬が入っていたのでしょう。

 どのくらい経ったでしょうか。 クラゲの国の入り口にある宿屋に着きました。

 そして「一平さん、着きました。クラゲー。今日はここで泊まりましょう。クラゲー。」

 宿屋の中に入っていきました。宿屋の主人は一平とクラ太郎を、喜んでもてなしてくれました。

 ごちそうは煮干しやイワシの団子でした。

 次の日、一平とクラ太郎は、朝早く宿屋を出て、バスに乗ってクラ太郎のうちに行くことになりました。

 ところが、一平はバスに乗ろうとして、ハッと立ち止まりました。

 なぜなら、バスの中はクラゲが天井まで ぐちゃぐちゃに重なり合って乗っていたからです。

 一平はバスの中に入りながら、大勢のクラゲに触りました。

 触ると冷たくて、とても良い気持ちでした。

 クラ太郎のうちに着くと、家の前で クラ太郎の兄弟が 踊っていました。

 それは歓迎の踊りでした。 足を上げたり、ボールを投げたりしながら 踊っていました。

 歌は 「クラゲー、クラゲー、クラクラ クラゲー。 今日はとっても楽しい日。

 みんなで イッペイクンを 歓迎しようー。 クラゲー。 ソーレ クラクラ クラゲー。」

 一平は 見ていて あまりに楽しいので、 一緒になって踊りました。

 そうして 一平は クラ太郎達に案内されて 広い座敷にやってきました。

 クラ太郎の兄弟は イワシ団子やクラゲの国のお米を ごちそうとして運んで来ました。

 一平はごちそうを食べながら、クラ太郎たちの踊りを見ていました。

 足や手が あちこちに 上がっている様子は、まるで 足同士が けんかをしているように見え、不思議な感じでした。

 ごはんを食べ終わると、一平はクラ太郎達と一緒に 寒天のベッドに 寝ました。

 ベッドは柔らかくて、とてもいい気持ちでした。

 そしてクラ太郎の いびきは 「グー クラゲー。グー クラゲー。」でした。

 一平はその声を聞きながら だんだん眠くなって来ました。

 あしたは どんな一日になるでしょう。 

 わくわくしながら、いつの間にか、深い眠りにおちていきました。

<作者澤村祐司氏プロフィール>

1981年生まれ。生田流箏、三絃を、金津千重子に師事。

筑波大学附属盲学校高等部、東京藝術大学を経て、同大学院修了。

伝統的な古典曲などの演奏をはじめ、作・編曲にも取り組む。

2013年チャレンジ賞、2017年塙保己一賞奨励賞受賞。