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野馬追文庫(南相馬への支援)十七

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野馬追文庫(南相馬への支援)(十七)
東日本大震災から五年
山内薫

 東日本大震災から五年の歳月が経過した。五年を節目に野馬追文庫の活動母体でもあった「東日本大震災被災地支援活動 子どもたちへ<あしたの本>プロジェクト」が平成二八年三月三一日をもって活動を終了した。この活動の呼びかけ団体である「一般社団法人 日本国際児童図書評議会(JBBY)」「一般財団法人 日本出版クラブ(JPC)」「一般財団法人 出版文化産業振興財団(JPIC)」のうちJBBYがJBBY Children in Crisis として引き続き支援活動を継続して下さることが同評議会の理事会で決まった。

 <あしたの本>プロジェクトが二〇一六年三月に終了するという話は昨年の十一月頃からあり、野馬追文庫を今後どうするかという問いかけがKさんからあった。ちなみにKさんが所属するジネット(お茶の水女子大学児童学科・発達心理学講座/発達臨床心理学講座同窓会)は年度切り替えの十一月に二〇一六年も支援を継続して下さることを決めたという。

 Kさんの示した選択肢は
一、三月で終了とする。
二、八月で五年になるので、そこで終了する。
三、JBBYの支援としての希望を出して継続する。(ただし、私たちの一存では決められず、会議に計らなければならないと思います)
四、野馬追文庫として独立してやっていく(送り方などのやり方は変更しなくてはならないと思います)
の四つで「Sさんや、Yさんは被災者ですのでこちらで決めないとならないと思います。」という意見だったが、私はやはり福島の状況を一番身近で見ておられるお二人の意見を聞いてみるべきと思いお二人に意見を伺った。

 Yからは次のようなメールを頂いた。
「何事も始まりがあれば、終わりがあります。様々な事情で支援が終わるということがあれば、それも受け入れなければならないと思います。これまでのご厚意に感謝いたします。

 五年という歳月は、本当に長く、そして厳しい道のりでもありました。福島は完全に復興したわけではなく、仮設住宅ももちろんありますが、やはり五年という歳月をすぎた今は、被災直後の状況とは異なってきています。厳しい言い方をすれば、被災者であっても自立の道を歩む方法を考えていかなければならないのではないかと思います。もし、支援を続けていただくにしても、支援を受ける人たちがこれからどうしようとしているのか、その目的にかなうような支援に変えていくことが必要かと思います。では、具体的にどのような支援と言われても頭には浮かびませんが、支援を受ける側と支援する側の意思確認は必要かと思いますが、いかがでしょうか?こんなことしか言えなくてすみません。」

 Sさんからは
「私が住む福島市と南相馬市の状況が違うかもしれないので、判断が難しいです。福島市では、震災直後とは違ってきています。例えば、子どもたちが外の芝生の上でお弁当を食べたり、どんぐりを拾ったりするのが見られるようになりました。学校や保護者が判断して、原発事故以前のような行動をとっている人も多く見られるようになりました。安全だと判断してのことかどうかは分かりません。職場復帰後、たまたま『うさこちゃんのにゅういん』を読んで、ぎょっとしました。うさこちゃんは、のどが痛くて入院し、手術していました。読後、私はその本の原書の初版年を確認してしまいました。チェルノブイリ原発事故よりも前の作品であったことに、少しほっとしました。私には甲状腺がんに見えたからです。それでも、もし、甲状腺がんの子どもが入院を不安に思ったら、この本で勇気づけられるかもしれないと思いなおしました。震災前にはそんなふうに連想することはありませんでした。

 震災から五年になります。五年で一区切り、でよいのかもしれません。福島の子どもたちには、たくましく生きてほしいと思います。選りすぐりの絵本を手渡し、お話の世界を子どもたちに届けたら、次は図書館でたくさんの本から自分で選ぶ、というステップへ橋渡しするという方法もあります。南相馬には、よい図書館があります。移動図書館もはじめるそうです。

 私は自分自身、被災者ということで甘えてしまっているのではないかと思うことがあって、そう考えました。震災直後、ラジオのDJの『がんばれる人が、がんばれる時に、がんばれるだけ、がんばればいい』という言葉にはげまされました。私は、がんばれる時とがんばれない時がありました。でも、震災からもう五年です。決断し、歩き出さなければならない時期だと思います。とりとめもない内容になってしまいました。」

 お二人の意見に対してKさんは
「野馬追文庫の今後について真摯なご意見を誠にありがとうございました。なにか物事が分かりながらやってきたわけではなく、これでいいのか、これでいいのかと常に迷いながら向きあってまいりました私たちにとりまして、おふたりのご意見は常に大きな導きです。私も昨日発送のあと、ジネットの方、JBBY事務局の方と今後についての話を交換しました。ジネットは、十一月が総会なのですが、来年度も今までどおりの支援を決めてくださっており、今までに集まった寄付金を来年度もかなり多額ですがくださる準備があるということです。必要ならば、更なる支援体制の強化も考えているともおっしゃってくださいました。JBBY事務局とも、野馬追文庫に限らずに、JBBYの今後の東北も含むJBBY Chlldren in Crisis 全体をどうしていこうかということを、この3月<あしたの本>プロジェクトがが終了するにあたって、考えていく良い機会との意見で一致しています。

 <あしたの本>の終了と共に、JBBYの支援を再考する話し合いを担当者(私も含む四人が今年は担当になっています。)十二月に南相馬に行った時には、南相馬の人たちの声を聞いてきます。支援の仕方は今の状況を見ながら変えていくことは必要ですし、自分たちがこれから何がどれ だけできるかの実際の見通しも必要でしょう。

 十一日に毎月本を届ける。その時その時の南相馬を必ず思う、忘れない。当事者でもなく、被災地に住んでいない者にとって、忘れないでいることは、そう有りたくないとの気持ちとは裏腹に、やはり生活の中に入れこんでおくことは難しいことですが、この五年間見事に私の中から「忘れる」ことはありませんでした。この支援の方法を、何か少し形は変わったとしても、つなげていきたいとは私自身は思っています。結論というか新しい方向は、お二人からいただきました意見も大事に受け取りながら、三月ぐらいまで時間をかけて考えていきたいと思います。」とメールで回答した。

 そして五年目を迎えることになったが、本を送っている南相馬の方などからは次のようなメールを頂いた。

 福島市に住むKさんの知人で野馬追文庫を後ろから支えて下さっているWさん。
「もう五年です。何が変わったのか何を失ったのか、いまだよくわかりませんがたくさんの方々とのご縁は支えになっています。この五年むさぼるように腑に落ちる言葉をさがしていました。そういう意味でもKさんのされている『本をおくる』ことは、心に降り積もる優しいめぐみだと思っています。心 より感謝いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」

 かのんのSさんより
「いつも素敵な本を頂戴し大変ありがとうございます。フクロウが大好きな職員・ペンギンが大好きなお子さん・・・・・・今回の絵本を開くとすぐ子供たちは大喜び。動物たちの癒し効果はばっちり子供や職員たちにも届いておりました。(三月にお送りした『ほんとのおおきさ特別編・元気です!東北の動物たち』高岡 昌江 (著)、小宮 輝之 (監修)、柏原 晃夫 (イラスト)、尾崎 たまき、学研マーケティング 二〇一二)
 昨年一年間、当事業所に対しましてあたたかいご支援を賜り感謝申し上げます。絵本から「かのん」の子供たちが学んだこと・・・・・・。表現する力・相手の立場に立ったものの見方・慈しみの心・憐みの心・・・・・・様々です。震災から五年目になろうとしていますが、絵本がかのんの子供たちの心に大きく影響していることは間違いなく、子供たちの心の成長が最近になって特に大きく感じられるようになってきました。きっとうちの子供たちも絵本を通じて感じ学んだことを大きくなってから思い出し、そのまた子どもに今後もその素晴らしさを伝えていってくれることと信じております。乱文ではございますが、本当にご支援に感謝申し上げます。S」

 仮設住宅の生活支援相談員Tさんより
「こんにちは。いつも支援して頂きありがとうございます。野馬追文庫届きました。お忙しい中ご準備して頂きありがとうございました。三・一一東日本大震災から五年が経ちました。数字で五年ですがなかなか難しい状況は続いています。津波震災での復興もなかなか再建されない方もおり震災前のようには戻れない状況もあります。本当に心の復興はいつになるのでしょうか。南相馬市も同様、復興の難しさがあります。四月からは小高区地域にも相談員が配置され皆さんを支援していくようになりました。少し前に進んでいく一歩かなと感じています。支援に癒されながら、また頑張って行きたいと思います。本当にありがとうございました。」

 南相馬市健康福祉部健康づくり課母子保健係のOさんより
「五年にわたるご支援、ありがとうございます。野馬追文庫を支援してくださる方も少しずつ変化していかれるようですが、また、絵本を受け取らせていただけることに感謝しております。絵本が届くのを心待ちにしています。こどもみたいですね。さて、今日は特別な日でしたが、普通に仕事をすることができました。放射線は大丈夫だったようだといえる生き証人になりたいので一〇〇歳まで生きてみたいものだと思っています。廃炉も見届けられたら、いいなあ。本当に、いつも心を寄せてくださってありがとうございます。花粉大丈夫ですか?うちの職場の皆さんも大変そうです。私は、そのあたり鈍感のようで、大丈夫です。季節の変わり目ですね。どうぞ、ご自愛ください。」

 私事ですが、この三月末でひきふね図書館を退職しました。この一年間は臨時職員というおまけの一年でしたが、これからは月一回程度、拡大写本の集まりや講習会などで図書館に行くだけで所属がなくなります。